ビジネスマンという視点で考えるなら、「どこにでも移動できる仕事場環境」という説明に魅力を感じる人は少なくないと思います。しかし、私自身が満足できる仕様であっても、汎用性がなければ多くの方の共感を得ることはできないでしょう。
どうせ作るなら、一人でも多くの人に共感して貰えるモノにしたい。これが私の「Mobile “Home” Office」計画の原点でした。
『Mobile Office』に魅力を感じる人が自分だけではないのなら、しっかりとニーズを分析し、それに合わせた仕様を考え、実現すれば、新しいSOHOビジネススタイルの提言となるかもしれない。それに、万人向けの汎用性の高い仕様なら、コストダウンにも繋がり、さらに需要は高まるはずです。
そこで、まず最初に我が国のパソコンやマイカーの使われ方を調べてみることにしました。
まずはパソコンです。機動性に優れているのはノートパソコンですが、企業ユーザーの場合、客先や会議室へ持ち運べることから営業や企画系の方がノートPCを選んでいるようです。一方、自分の机で作業することがほとんどという人が使うのは画面も大きく使いやすいデスクトップ機です。
しかし、個人ユーザーの場合、必ずしもこの図式が当てはまりません。とくに、書斎を持たないお父さんたちは、実際に(外出時に)携行することもなければ、(いざというときに)持ち歩くことができる可搬性も少ないのですが、使わないときに片づけられる省スペース性に魅力を感じているようですが、自室(書斎)や専用机を用意できる人は、操作性や拡張性などのコストパフォーマンスに魅力を感じているようです。ノートパソコンで物足りなさを感じる人の妥協策が(可動式の)専用ラックですね。プリンタなどの周辺機器も含めた一式をコンパクトに収容する(キャスター付きの)専用ラックに載せて(使わないときは)部屋の隅に寄せておくなど、置き場所に工夫して使っているようです。
一方、30~50代の家庭で使われるマイカーは、(広い居住空間が確保できる)ミニバンタイプが一番人気です。(メーカーが発表する新車もセダンやクーペは激減し、ハイトワゴン、2BOXなどスペースユーティリティが多い車種が増えました)
これも、見かけや運動性能より実用性を重視した結果なのでしょう。
ということは、デスクトップ機を搭載できて、広い車室空間を持つ車なら、より多くの人に共感を得られそうですが、その規模やレベルが一般消費者とかけ離れていては雲の上の話になっていまいます。(個人事業者やサラリーマンが)書斎代わりに使えて、日常の足としても十分に使えることが必要不可欠です。
つまり、移動できる“オフィス”とは言っても、建設工事現場に置いてあるプレハブ風の「移動事務所」やマイクロバスやトラックを改造した「移動展示車」の ようなものではなく、家庭用RV車に(一人分の)書斎に必要な(最小限度の)機材を載せた「移動書斎」という雰囲気に納める仕様が良さそうです。
一方、ベースとなる車両には(イメージ的にも装備面からも)商用車は避けたいところです。と言っても、乗用車ベースの車両では車内空間が十分とは言えませんから、ワンボックス車やミニバンが最適ですね。ちなみに、車内空間の広さを考えれば、車幅の広い外国製ミニバンがいいのですが、信頼性や維持費の面では国産車の方がはるかに割安ですし、国内の道路事情などを考えると大きすぎる車は扱いにくいので、小型車サイズ(全長:4.7m未満、全幅:1.7m未満、全高:2m未満)程度の大きさを基準に考えることにしました。
とはいえ、車内での動きやすさを考えれば、立って歩ける程度の車内高(1.8m程度)も必要になりますし、どうせ改造車として「特種用途」(8ナンバー)車両として登録することになるので、厳密にサイズに拘る必要はありません。全長も(カーフェリー乗船料金を考えれば)最大でも5m未満なら問題はないでしょう。(余談ですが、8ナ ンバー車は、サイズの制約がなく、5ナンバー車や3ナンバー車に比べて自動車税や車両保険が大幅に安くなります。その点でも「Mobile Home Office」のメリットは少なくありません。
この時点で、候補に上がったベース車は、マツダ「ボンゴフレンディ」。天井にテントを装備するオートフリートップ仕様なら特別な改造をしなくても十分な車内空間が確保できるという利点があります。しかし、オートフリートップ仕様の最大の欠点は、ルーフを開く場所が限られること。メカニズム的には問題がなくても、(路上はもちろん、)コインパーキングや市街地の駐車場などで展開していたら注意される可能性も出てきます。少なくとも、走行可能な状態のままでも十分な居住性が得られる車両であることが求められます。
この条件に合うのは、ミニバンベースのキャンピング車です。いろいろと調べてみたところ、「ボンゴフレンディ」をベースに屋根上げ改造したキャンピング車「emotion」があるというので、これの車内を改装し、「個人の仕事部屋」仕様とすることにしました。