・その後の「Mobile PC Car」
「DOS/V magazine CUSTOM」誌連載中に、無事にナンバーを取得した「Mobile Computing Car」は、初代「Mobile Home Office」とともに首都圏で活躍中だ。
初代での電源問題(外部電源と内部電源の切替の煩わしさや外部電源供給時のプラグの外れによる停電事故)などを改善するために採用した「無停電電源」(改造品)は快調で、停車時はもちろん、走行中の電源としても具合よく動作している。
また、夏場の温度上昇対策として屋根と内張りの間に埋め込んだ断熱用マットと、後部ドアに埋め込んだ(ソーラーパネル給電による)電動ファンのおかげで、炎天下に駐車した直後でもパソコンの動作に異常は見られないのはもちろん、乗車する人間も我慢できる程度の暑さに留まっているというのは、予想以上の成果と言えるだろう。
唯一の誤算は、助手席ダッシュボードに取り付けたノートPCの過熱対策を忘れていたことだ。視界の妨げにならず、運転中の視認性もいい場所に設置した結果、フロントガラスを通じて射し込む日光に晒されることを忘れていた。初夏を迎え陽射しが強くなると、GPS信号を正しく受信できなくなってしまうのだ。
エアコンからの冷風を吹きつけると正常に戻るが、なんらかの対策をしなければならないだろう。本格的に対策するなら、PC台設置のために外してしまった送風パイプを復活してエアコンの冷風が直接PCに当たるようにするのがベストだろう。いずれ機会があればやってみようと考えているが、簡易対策としてキーボード上に断熱マットを被せてみたところ、かなりの効果を得ることができたので、とりあえずそのままにしている。
・専用カーナビより凄いパソコンGPS
助手席前にノートPC用の棚を装備したことで、運転中でも画面をチェックする程度のことは可能だし、GPSアンテナを接続しているのでGPS対応の地図ソフトであれば常に現在位置を表示することも可能になったわけだが、「Mobile Computer Car」を名乗る以上、画面の大きさ以外でも専用カーナビ機より優れていなければ面白くない。
もっとも、パソコンでは用途に応じて複数の同種ソフトを使い分けたり、他のソフトと連携することでより便利に使うことができるのはいうまでもない。パソコン用地図ソフトの上にGPSで測定した自車位置情報を重ねる簡易カーナビゲーションだけではないことを実証したい。
というわけで、実際にドライブでいくつかの地図ソフトを使ってみることにした。せっかくの検証ドライブだし、出かける前にネット掲示板に書いておいたところ、仲間の一人N氏から同行したいというメールが届いたのだが、自宅を知らないので住所を尋ね、ゼンリン地図ソフト「ZⅡ」の住所検索機能を使ってみることにした。検索パレットで、住所ボタンを順番にクリックすると建物までピンポイントで示してくれるので簡単だ。(画像01)
N氏の自宅はわかったが、「ZⅡ」はGPSで現在位置も表示できる(画像02)とはいえ、さすがに住宅地図では情報が細かすぎて運転中の確認は難しい。
N氏を乗せた「Mobile PC Car」が向かうのは、東名高速道路だ。幹線道路はわかりやすいので「ZⅡ」のルート検索(画像03)をしてみたが、筆者が日頃使うルートとは違っている。単純に走行距離を基準に選択しているのだろう。
そこで、ここからは「プロアトラス2000」を見ながら走ってみることにした。
道路地図として馴染み深いアルプス社「プロアトラス2000」はルート検索やナビゲーションの機能はないが、現在位置表示(画像05)やATIS交通情報(画像06)の表示、インターネットアクセス(画像07)などが可能で、運転のための情報収集面で重宝だ。
(※ 6月2日「ZⅢ」、6月23日「プロアトラス2001」が発売される。)
クルマの運転時に求められる機能「カーナビゲーション」では、ソニー「Navi'n You Ver.4.0」が最高だ。他の地図ソフトと違い、最初から「ナビゲーション」を目的としたアプリケーションとして開発された製品なので当然なのだが、カーナビ専用機と比べても遜色がないどころか、最高峰の水準だ。「Navi'n You 4.0」に使用できる地図は「ナビ研S規格拡張フォーマット」とアルプス社「プロアトラス」シリーズ。(本稿執筆時点の情報によれば、7月下旬にはゼンリンから730市町村の詳細地図が収録された「Navi'n You4 2000 Edition専用マップ地域詳細版」が発売されるとのことなので、さらに使い分けが便利になることだろう)
目設定やルート検索は「ナビ研」マップ、ルートガイドは「プロアトラス」と用途に応じて使い分けたり、併用することで見やすい画面と高機能を実現できるのが魅力的だ。また、ルートガイド機能はカーナビ専用機同様、ガイド画面と音声ガイドが使えるので快適だ。(画像08~11)
このソフトが、専用カーナビより勝っている機能の一つが、第三者に対してもルートガイドすることができること。ルートマップをプリンタに出力したり、ビデオファイルとして出力できるので、それを渡すことができるというわけだ。
今回のドライブでは東名高速から山中湖に回り、中央高速で帰るつもりだったが、助手席でインターネットにアクセスしていたN氏が、「中央高速は混んでいるし、沼津に出かけているT君が合流したいと言っている」というので、急遽コースを変更、景色の良い箱根峠に向かうことにしたが、カーナビも持たず地理不案内なT君とスムーズに合流するためにナビゲーションムービーを作り、メールで送ることにした。(画像12,動画1,動画2)
カーナビ専用機では不可能な技だが、「Mobile Computer Car」ならではの高等テクニックだ。ここまで使いこなせるとなると、専用カーナビより劣るのは自律航法センサーを持たないことによる精度誤差だけ。しかし、GPS情報精度が上がったこととマップマッチングによる補正(Navi'n You に装備)により、郊外の幹線道路では誤差をほとんど感じなくなってしまったのは喜ばしいことだ。
(コラム)GPS の精度が上がった!
地球の周回軌道上にある24個の人工衛星から発信される情報を利用して、受信者の緯度や経度、高度などを測定するシステムとしてGPS は様々な分野で活用されている。だが、GPS システムを運営する米国国防総省は、軍事的意図から民生利用向けに提供する情報の精度を意図的に落としているため、電波状態の良い場所でも50~100m程度の誤差が生じる仕掛けになっていた。
ところが、米国国防総省から嬉しいニュースが発表された。数年以内に精度を落とすことを止めることにしていたが、その時期を早め、今年5月2日以降、軍事紛争が起きている地域以外では精度を落とさない情報を流すことにしたというのである。
一般的なカーナビであれば、FM放送電波による位置情報補正サービス「D-GPS」や自車の走行情報を検出する「自律航法」システムを併用することで誤差を吸収しているが、これらの手法を利用することが難しい「パソコンGPS」には朗報だ。
というわけで、早速 GPSの精度を試すべく、様々な場所を走行してみたが「素晴らしい!」の一言が口からこぼれてしまった。
なにしろ、郊外の開けた場所では“ほぼ正確”に現在位置を確認できるのだ。誤差はせいぜい5m程度だろうか。さすがに都心に入ると、建物の影響もあり、電波が複雑に反射するからだろう、数十m程度の誤差が生じることもあるようだが、幹線道路を走っている限り、ほとんど気にならないほどだ。
さて、次回はいよいよ最終回。今回のドライブで撮影した写真や動画をその場でCD化したレポートを届けるほか、モバイルオフィス化に適した車なども紹介したい。